日本では自分個人の利益よりも社会の利益を優先するという考え方が当たり前のようにあったにもかかわらず、今では個人の利益を優先して主張する輩が多くなっているように感じますが、これは移民等が増加したことも原因なのでしょうか?

ご指摘の通り、近年、日本社会で「個人の利益」を主張する傾向が強くなっていると感じる方は多いようです。この変化の要因として、外国からの移民増加が挙げられるかという点について、いくつかの観点から見ていきましょう。

日本社会における「個人の利益」の台頭

まず、日本社会がかつて「個人の利益よりも社会の利益を優先する」という考え方が主流であったことは事実です。これは、戦前の「家」制度や、戦後の高度経済成長期における「会社」を基盤とした共同体意識に根ざしています。集団に属し、その集団に尽くすことが個人の幸せにつながるという価値観が共有されていました。

しかし、この価値観は徐々に変化してきています。その背景には、以下のような様々な要因が複合的に絡み合っていると考えられています。

  • バブル崩壊と経済の停滞: 終身雇用制や年功序列制といった、会社への忠誠心と引き換えに安定を約束するシステムが崩壊し、個人の努力や成果が直接的に評価される成果主義が導入されました。これにより、共同体への貢献よりも、個人の能力や利益を追求する合理的な行動が求められるようになりました。
  • 教育の変化: 戦後の教育は、個人主義や個性の尊重を掲げてきました。これにより、集団行動よりも個人の意思を尊重する考え方が浸透していきました。
  • 情報化社会の進展: インターネットやSNSの普及により、個人が多様な価値観に触れる機会が増え、自分の意見や主張を表明しやすくなりました。これにより、集団の意見に無批判に従うのではなく、個人の考えを尊重する風潮が強まりました。
  • 少子高齢化: 人口減少により、従来の集団を基盤とした社会システムが維持困難になっています。
  • 社会保障制度の変化: 企業や家族といった共同体に頼るだけでなく、個人が自助努力で老後や病気に備える必要性が高まりました。

これらの要因は、いずれも1990年代以降、日本社会が内側から経験してきた変化です。つまり、外国人移民の増加が顕著になる前から、日本の社会構造や価値観は「個人主義」へと変化する傾向にあったと言えます。

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外国からの移民増加との関連性

では、外国からの移民増加が、この傾向に影響を与えている可能性はあるのでしょうか?

  • 文化の多様化: 外国から来た人々は、日本とは異なる文化や価値観を持っています。彼らが自分の利益や権利を主張することは、母国ではごく自然なことです。このような価値観が日本社会に持ち込まれることで、日本人の中に「自分の利益を主張しても良い」という意識が広がる可能性は考えられます。
  • 共存における課題: 異なる文化背景を持つ人々が共存する社会では、それぞれの文化的・個人的な価値観を尊重し、時には対立を調整する必要があります。このプロセスは、個人の権利や主張を明確にすることの重要性を浮き彫りにします。
  • 「外国人だけが」という認識: 日本のメディアやSNSでは、外国人が自らの権利を主張する様子が強調されて報じられることもあります。これにより、「日本人は謙虚なのに、外国人は自己主張が強い」というイメージが形成され、その結果として「自己主張する」という行為自体が、外国人特有のものとして認識される可能性はあります。

しかし、これらはあくまで「影響を与えている可能性」であり、「主たる原因」であると断定することは難しいです。

結論

ご質問への答えとして、「個人の利益を優先する人が増えた」という現象の主要因は、日本社会の内部で起こった経済的・社会的・教育的な変化であり、外国からの移民増加は、その変化を加速させたり、可視化させたりする要因の一つである可能性はあるものの、直接的な主原因であるとは考えにくい、というのが現時点での一般的な見方と言えるでしょう。

日本はもともと、単一民族国家としての意識が強く、集団の和を重んじる文化が根付いていました。しかし、グローバル化の進展や社会の多様化の中で、個人の権利や多様な価値観を尊重する「個人主義」の要素を取り入れていくことは、避けて通れない課題となっています。これは、移民の増加に限らず、日本社会が直面している本質的な変化と言えるでしょう。

Posted by 鬼岩正和