イランの核兵器開発があったということでアメリカがイランに対してミサイル攻撃を行いましたが、北朝鮮ではすでに核兵器を持っているとも言われているにもかかわらずアメリカが攻撃しないのはなぜなのでしょうか?ロシアや中国との取引?

この問題は非常に複雑で、アメリカの外交政策や軍事戦略における重要な違いを反映しています。ご指摘のように、イランへの攻撃と北朝鮮への不攻撃の背景には、様々な要因が絡み合っています。

イランへの攻撃の背景

ご質問の「アメリカがイランに対してミサイル攻撃を行った」という点ですが、2025年6月下旬に報道されたCNNなどのニュースによると、イランの核関連施設をアメリカ軍が空爆したことに対し、イランが報復としてカタールやイラクにある米軍基地へミサイル攻撃を行った、という経緯のようです。

アメリカがイランの核施設を攻撃した主な理由は、イランの核兵器開発を阻止するためです。イランは核拡散防止条約(NPT)に加盟していますが、核開発プログラムが平和利用の範疇を超え、核兵器製造につながる可能性が強く懸念されてきました。

  • 核開発の進展: イランはウラン濃縮を大幅に進め、核兵器製造に必要な高濃縮ウランを大量に保有しているとされています。これにより、核兵器を短期間で製造できる「ブレイクアウト・タイム」が非常に短くなっていると見られています。
  • 国際社会の懸念: 国際原子力機関(IAEA)は、イランが核兵器開発に関連する研究を行っていた疑いを指摘しており、国際社会はイランの核開発を強く警戒していました。
  • 外交の行き詰まり: 2015年のイラン核合意(JCPOA)は、イランの核開発を制限することで合意されましたが、アメリカが一方的に離脱し、その後も交渉は難航していました。

こうした状況下で、アメリカはイランの核兵器開発が「レッドライン」を超えようとしていると判断し、軍事的な行動に踏み切ったと考えられます。

北朝鮮を攻撃しない理由

一方で、北朝鮮はすでに核兵器を保有していると国際的に認識されており、さらに核・ミサイル能力を増強し続けています。それでもアメリカが軍事攻撃に踏み切らないのは、主に以下の理由が挙げられます。

  1. 「核の抑止力」の存在:
    • 北朝鮮はすでに核兵器を保有し、核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発しています。
    • もしアメリカが攻撃すれば、北朝鮮は核兵器で反撃する可能性が非常に高く、韓国や日本、さらには米本土までもが核攻撃の標的となるリスクがあります。
    • このような壊滅的な被害を避けるため、「核の抑止力」が働き、アメリカは軍事攻撃を躊躇せざるを得ません。
  2. 地理的なリスクと報復の規模:
    • 北朝鮮の核施設や軍事施設は、韓国のソウルや中国との国境に近い場所に集中しています。
    • 仮にアメリカが攻撃しても、北朝鮮の反撃により、在韓米軍や韓国の都市が壊滅的な打撃を受ける可能性があります。
    • また、核施設への攻撃は放射能汚染を引き起こし、周辺国に甚大な環境被害をもたらす恐れがあります。
  3. 中国とロシアの影響力:
    • ご指摘の通り、中国とロシアは北朝鮮と密接な関係を築いています。
    • アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、中露が軍事的に介入する可能性があり、大規模な国際紛争に発展するリスクがあります。
    • 特に中国は、北朝鮮の体制崩壊が自国の安全保障に与える影響を懸念しており、軍事行動には強く反対するでしょう。
  4. 外交交渉の余地:
    • アメリカは、北朝鮮に対しては、軍事的な圧力だけでなく、対話や交渉を重視する姿勢を維持しています。
    • 過去には米朝首脳会談も行われ、非核化に向けた話し合いが試みられました。
    • 軍事攻撃は外交の道を完全に閉ざしてしまうため、対話による解決の可能性を温存したいという思惑があります。
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まとめ

イランへの攻撃は、「まだ核兵器を保有していないが、開発を進めている国」に対する「阻止」という性質が強いと考えられます。一方、北朝鮮は「すでに核兵器を保有している国」であり、攻撃は核兵器の応酬という最悪のシナリオにつながる可能性が高いです。

要するに、「核兵器を保有する前」の阻止と、「核兵器を保有した後」の抑止という、段階の異なる戦略がとられていると言えます。イランは核兵器開発の最終段階に近づいていると見られていたため、アメリカは「最後のチャンス」として軍事行動に踏み切ったのかもしれません。一方、北朝鮮の場合は、すでに「最後のチャンス」は過ぎており、攻撃すれば自国や同盟国が壊滅的な被害を受けるリスクがあるため、攻撃を避けているのです。

ご指摘の通り、中国やロシアの存在は、北朝鮮への軍事行動をさらに困難にしています。アメリカの対北朝鮮政策は、軍事的な選択肢が極めて限定される中で、いかに外交と圧力を組み合わせて非核化を促すか、という非常に難しい課題を抱えています。

Posted by 鬼岩正和