ケインズ経済学(積極財政)における「賢い支出」をすることで日本の経済状況は高確率で良化すると思われるのですが、政治家や財務省はなぜそのようなことをしないのでしょうか?日本経済を悪化させることが目的なのでしょうか?

ケインズ経済学に基づく「賢い支出(積極財政)」は、経済の停滞やデフレからの脱却に有効とされています。しかし、日本の政治家や財務省がこのような政策に慎重である背景には、以下のような複合的な要因が存在します。

🧭 財務省が積極財政に慎重な理由

  1. 財政規律と国債市場の信認維持

財務省は、国家の信用を守るために財政規律を重視しています。過度な財政赤字が続くと、国債の信頼性が低下し、金利の上昇や市場の混乱を招く恐れがあります。実際、2022年の英国では、財源の裏付けがない減税策が市場の混乱を引き起こしました。

  1. 高齢化による社会保障費の増大

日本は急速な高齢化が進行しており、医療や年金などの社会保障費が増加しています。これにより、将来的な財政負担が懸念され、慎重な財政運営が求められています 。

  1. 過去の財政刺激策の効果と副作用

1990年代以降、日本は複数の財政刺激策を実施しましたが、期待された経済成長が得られず、結果として国債残高が増加しました 。この経験から、財務省は財政支出の効果に対して慎重な姿勢を取っています。

🏛️ 政治家が積極財政に踏み切れない理由

  1. 選挙と短期的な人気取り

政治家は選挙での勝利を重視するため、長期的な財政再建よりも、短期的な人気取りを優先する傾向があります。増税や社会保障改革などの不人気な政策は、選挙での不利を招くため、避けられがちです。

  1. 有権者の理解と支持の不足

財政政策の重要性や必要性について、有権者の理解が十分でない場合、政治家は積極的な財政政策を打ち出しにくくなります。国民の支持が得られない政策は、実行が難しいのが現実です 。

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🔄 現在の政府の対応と動向

最近の動向として、日本政府は「機動的な政策対応」を掲げ、経済状況に応じた補正予算の編成を検討しています。また、賃上げを通じた経済成長の実現を目指しています 。さらに、財務省は超長期国債の発行を見直すなど、市場の安定を図る動きも見られます。

結論:経済悪化が目的ではない

財務省や政治家が積極財政に慎重なのは、日本経済を意図的に悪化させるためではなく、財政の持続可能性や市場の信頼性を維持するためです。しかし、経済成長と財政健全化のバランスを取るためには、国民の理解と支持を得ながら、柔軟かつ効果的な政策の実行が求められます。

Posted by 鬼岩正和