トランプ大統領が関税政策を大きく変更していますが、これはドルの過大評価によっておこる米国経済の不均衡を是正するために関税対象国の通貨を減価させることを目的とし、貿易と安全保障を統合した考えから製造業の復活と非グローバル化によるアメリカ帝国を目指す？

2025年3月23日

トランプ大統領の関税政策変更は、単なる保護主義ではなく、米国経済の根本的な不均衡、特にドルの過大評価に起因する輸出・製造業の低迷を是正する狙いがあるという見方があります。スティーブン・ミラン氏の「A User’s Guide to Restructuring the Global Trading System」では、ドルが国際準備通貨として需要過多になり、結果として米国は大規模な貿易赤字や製造業の空洞化を招いていると指摘されています。

この理論に基づけば、トランプ政権は関税を利用して対象国の通貨を相対的に減価させ、米国製品の価格競争力を高めるとともに、国内製造業の復活や、米国と信頼できる少数のパートナー間で完結するサプライチェーンの再構築を狙っていると考えられます。さらに、貿易政策と安全保障を統合することで、米国が防衛の傘を提供する見返りに、同盟国にも一定の経済的負担（例えば高い関税）を求めることで、よりバランスのとれた国際経済秩序を構築しようとする意図も読み取れます。

しかし、こうした政策には多くのリスクも伴います。関税引き上げは報復措置を招く可能性があり、同時に為替市場やグローバルなサプライチェーンに不確実性をもたらす懸念も指摘されています。また、ドル高是正のために関税だけで通貨を大きく動かすことは短期的には可能でも、長期的に見れば国際金融システム全体に混乱を及ぼす可能性があり、非グローバル化を推し進める試みは国際社会との摩擦を深めるリスクもあります。