原子力電池で動く潜水艦!アメリカやロシアなど現在では原子力潜水艦が。大型原子力潜水艦にはない小型化された高性能な潜水艦ができるのではないでしょうか?
純粋な潜水艦としての性能を追求する場合、小型化は多くの利点をもたらします。しかし、原子力電池(RTG)は、現状の原子力潜水艦の動力源としては、いくつかの点で課題を抱えています。
まず、原子力潜水艦の主な利点である「高速航行」と「長期間の潜航」を実現するためには、莫大なエネルギーが必要です。
原子力潜水艦の要求されるエネルギー量
原子力潜水艦は、水中を高速で航行するために、数万馬力に及ぶ強力な推進力(プロペラを回す力)を必要とします。さらに、乗組員の生活に必要な電力(照明、空調、調理など)、生命維持装置(空気再生装置、海水淡水化装置)、そして各種センサーや兵器システムを稼働させるためにも、大量の電力が求められます。
これらの要求を満たすためには、数メガワットから数十メガワットの出力を安定的に供給できる動力源が必要です。
原子力電池(RTG)の特性と課題
原子力電池(RTG: Radioisotope Thermoelectric Generator)は、プルトニウム238などの放射性同位体が崩壊する際に発生する熱を、熱電変換素子(ゼーベック効果)を用いて電力に変える装置です。
- 出力: RTGの出力は、数百ワットから数キロワット程度です。これは、火星探査車「キュリオシティ」や「パーサヴィアランス」など、電力消費が少ない宇宙探査機には適していますが、潜水艦の動力源として必要なメガワット級の出力には遠く及びません。
- 寿命: RTGは、プルトニウム238の半減期(約88年)に合わせて長期間にわたって電力を供給できますが、出力は徐々に低下していきます。
- 熱: RTGは熱電変換の効率が低いため、大量の熱を発生させます。潜水艦の動力として使おうとすると、この熱を効率的に冷却する必要があり、潜水艦のステルス性を損なう可能性が出てきます。
- 燃料: RTGに使用されるプルトニウム238は、非常に高価で希少な物質であり、大量に確保することは困難です。
これらの理由から、原子力電池は、潜水艦を動かすほどの高出力を得ることが不可能であり、動力源としては実用的ではありません。
原子炉の優位性
一方、原子力潜水艦に搭載されている小型の原子炉は、核分裂反応によって莫大な熱エネルギーを発生させ、これを蒸気タービンを回す力に変えることで、メガワット級の出力を安定的に供給できます。
- 高出力: 原子炉は、潜水艦の高速航行に必要な強力な推進力を生み出すことができます。
- 長寿命: 一度燃料を装填すれば、数十年間にわたって燃料交換なしで運用が可能です。これにより、潜水艦の航続距離は実質的に無限となり、長期間の潜航が可能となります。
今後の展望と小型化への課題
純粋な潜水艦として運用する小型の原子力潜水艦を開発する研究は行われていますが、そこにも課題があります。
- 最小サイズ: 原子炉を安全に稼働させるためには、ある程度のサイズと重さが必要になります。これを極限まで小型化することは、技術的にも安全面でも非常に難しい課題です。
- 原子炉の小型化: 原子炉を小型化すると、出力が低下し、潜水艦としての高速航行能力が損なわれる可能性があります。
- 技術的な難易度: 小型・高出力の原子炉を開発し、それを潜水艦に搭載する技術は、非常に高度であり、開発コストも莫大になります。
結論として、現状の技術では、原子力潜水艦に求められる高出力・長期間のエネルギーを供給できるのは原子炉のみです。原子力電池は、その原理上、潜水艦の動力源として必要な出力を得ることができず、小型化を追求するとしても、代替技術として検討される可能性は低いと言えます。