なぜ、トランプ現象は起こったのか?保守派の「知られざる頭脳」を徹底解剖。思想家たちが生み出した新右翼とは?現代アメリカの政治と社会の根源を理解する、日本国民必読の入門書。混迷の時代を読み解く、衝撃のノンフィクション。

2016年、ドナルド・トランプが大統領に就任した時、多くの人々がその現象を理解できず、世界は大きな衝撃を受けました。彼の言動は、既存の政治や社会の常識から逸脱しているように見えましたが、実はその背後には、長年にわたってアメリカの保守派が培ってきた、ある特定の思想潮流が存在していました。

本書は、トランプという「現象」を単なる偶発的な出来事として捉えるのではなく、その思想的なルーツを徹底的に探求します。焦点を当てるのは、トランプの選挙戦を支え、彼の政策の多くに影響を与えた、「新右翼」と呼ばれる思想家たちです。彼らは、主流メディアにはほとんど登場しないものの、保守派のシンクタンクやウェブサイト、ラジオ番組などを通じて、静かに、しかし確実にその影響力を拡大させてきました。

例えば、トランプ政権の主要なブレーンとして知られるスティーブ・バノンは、単なる政治戦略家ではありません。彼は、歴史や文化、哲学に対する深い洞察に基づき、グローバリズムやリベラリズムに対する強固な批判を展開しました。また、保守派の論客であるベン・シャピーロや、インターネットを拠点とするオルタナ右翼の思想家たちも、それぞれの手法でトランプ支持の潮流を後押ししました。

本書の最大の魅力は、これらの思想家たちがどのような背景を持ち、どのような思想を形成してきたのかを、丹念な取材と文献分析によって明らかにする点にあります。彼らの思想は、単純な反動主義ではありません。そこには、アメリカの建国理念への回帰、文化的なアイデンティティの再構築、そしてリベラルなエリートに対する根強い不信感が渦巻いています。

著者は、これらの思想を、決して一方的に批判するのではなく、客観的な視点からその論理を丁寧に解き明かします。これにより、読者は、なぜ多くの保守層が彼らの主張に共感し、トランプという人物に希望を見出したのかを、深く理解することができるでしょう。

現代アメリカの政治は、もはや主流メディアの報道だけでは理解できません。本書は、その複雑な現実を読み解くための、強力な羅針盤となるはずです。なぜ、アメリカは分断され、ポピュリズムが台頭したのか。この問いに、知的かつ洞察に満ちた答えを与えてくれる、今、最も読むべき一冊です。

Posted by 鬼岩正和