なぜ靖國神社は、これほどまでに論争の的となるのか?私たちは本当に「靖國」を知っているのか?神話や政治のフィルターを外し、日本人の根源的な「祀る心」を問い直す、タブーなき究極のノンフィクション。歴史の真実と向き合う、必読の書。

あなたは「靖國神社」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人が、戦争や政治、国際関係といった、重く複雑なイメージを抱くかもしれません。しかし、もしそのイメージが、長年にわたる政治的な対立やメディアのフィルターによって歪められたものだとしたら?

本書は、単なる歴史の解説書でも、特定のイデオロギーを主張する本でもありません。そこにあるのは、ジャーナリストとしての徹底した取材と、学問的な厳密さをもって、靖國神社の本質に迫ろうとする真摯な試みです。著者は、なぜ靖國神社が創建され、どのように歴史的な役割を果たしてきたのかを、一次資料に基づき丹念に紐解いていきます。

最も重要なテーマは、日本人の「祀る心」です。私たちはなぜ、故人を、特に国のために命を捧げた人々を、神として祀ってきたのか。この根源的な問いを、日本神話の時代から現代に至るまで、多角的に考察します。そこには、神道や仏教といった宗教観念だけでなく、家族や地域社会における死者への敬意、そして共同体の一員としての連帯感といった、日本文化の奥底に流れる精神性が深く関わっていることが明らかにされます。

本書の魅力は、その徹底的なバランス感覚にあります。戦争美化論や、逆に全面的な否定論といった、紋切り型の議論を排し、冷静かつ客観的な視点から、靖國神社が抱える光と影の両方を描き出します。例えば、戦没者の遺族が靖國に抱く切実な思いや、国際社会から向けられる厳しい眼差し、そして神社の運営が直面する現代的な課題まで、多岐にわたる視点から議論を展開します。

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また、読者は、本書を通じて、靖國神社が単なる「戦争のシンボル」ではなく、日本人のアイデンティティや、歴史との向き合い方を考える上で、避けて通れない場所であることを再認識するでしょう。「靖國問題」が、いかに私たちの社会のあり方、さらには私たち自身の「死生観」に深く根差しているのかを、改めて問い直すきっかけを与えてくれます。

この本は、政治的な対立を超えて、冷静に歴史と向き合いたいと願うすべての人に読んでいただきたい一冊です。そして、靖國神社を巡る議論が、感情的な対立ではなく、より建設的な対話へと向かうための、重要な一歩となることを願っています。

Posted by 鬼岩正和