地殻変動する世界を読み解く：AI、データ、サプライチェーンが織りなす「新しい地政学」の衝撃。歴史の終焉から新時代の覇権競争へ、グローバル秩序の未来を予見する羅針盤。

2025年9月2日

かつて、地政学は国家、領土、軍事力という伝統的な要素を中心に語られてきました。しかし今、私たちは全く新しい地政学の時代を迎えています。それは、AI、データ、技術覇権、サプライチェーン、そして気候変動といった、これまでの地図には描かれていなかった要素が、世界の勢力図を根底から塗り替えている時代です。

本書『新しい地政学』は、この地殻変動の最前線を徹底的に分析し、私たちがいま直面している現実と、これから訪れる未来を鮮やかに描き出します。

テクノロジーが切り開く新たなフロンティア

地政学の主戦場は、もはや海や陸だけではありません。宇宙空間やサイバー空間、さらにはAIの開発競争こそが、今後の覇権を握る鍵となっています。中国の「宇宙強国」戦略、アメリカの半導体規制、そして西側諸国が協力して進める量子コンピューティングの研究。これらはすべて、軍事力以上に国の命運を左右する「テクノロジー地政学」の表れです。本書では、米中間のハイテク競争から、AIがもたらす倫理的・社会的課題まで、多角的に掘り下げます。

見えない権力：データの地政学

現代の石油とも称されるデータは、巨大な権力を持っています。GAFAやBATといった巨大テック企業は、国家をも凌駕する情報力と影響力を持ち、私たちの生活の隅々まで浸透しています。彼らが握るパーソナルデータや行動履歴は、社会の動向を予測し、人々の意思決定に影響を与えることを可能にします。この「データの地政学」を理解せずして、現代社会を読み解くことはできません。本書では、デジタル監視社会のリスクや、データ主権をめぐる各国の思惑を明らかにします。

サプライチェーンが描く脆弱な世界地図

パンデミックや地政学的緊張が高まるにつれ、グローバルなサプライチェーンの脆弱性が露呈しました。特定の国に生産が集中したことで生じたマスクや半導体の不足は、国家安全保障上の重大な問題として認識され始めています。原材料の確保、生産拠点の多角化、そして物流ルートの確保は、いまや各国にとって最優先の課題です。本書は、経済活動の根幹をなすサプライチェーンが、どのようにして新たな地政学的武器となりうるのかを解説します。

脱炭素、気候変動がもたらすグリーン地政学

環境問題は、もはや倫理的な課題にとどまりません。脱炭素化に向けた世界的な動きは、再生可能エネルギーやレアメタルをめぐる新たな覇権争いを引き起こしています。リチウムやコバルトなどの希少資源をめぐる争奪戦、そして炭素税や国境調整措置をめぐる新たな貿易摩擦は、まさに「グリーン地政学」の到来を示唆しています。本書は、持続可能な未来を目指す取り組みが、同時に新たな国際紛争の火種となりうるという、パラドックスを提示します。