社会を揺さぶる過激主義の正体とは。世界が直視すべき分断の処方箋。ゴーイング・メインストリームが解き明かす、かつての「異端」が現代の「常識」へと変貌を遂げ、私たちの日常を静かに浸食していく驚愕の真実と危機の本質。

かつて、極端な思想や過激な主張は、社会の隅に追いやられた孤独な叫びに過ぎませんでした。しかし、現代を生きる私たちは、ある種の不気味な既視感を抱きながら日々を過ごしています。昨日まで「あり得ない」と切り捨てられていた過激な言説が、今日はテレビのニュースで語られ、SNSで数万の共感を集め、ついには政治の中枢を動かす。この現象の正体は何なのか。その問いに対して、冷徹な分析と熱い警鐘を鳴らすのが本書『ゴーイング・メインストリーム』です。

本書が描くのは、単なる政治的な右傾化や左傾化の物語ではありません。それは、私たちの「普通」という境界線が、いかに容易に、そして巧妙に書き換えられてしまうかという人間心理の脆弱性の記録です。著者は、インターネットという広大な情報の海が、いかにして過激主義者の格好の戦場となったかを鮮やかに描き出します。匿名性の影に隠れた憎悪が、アルゴリズムという追い風を受け、やがて「正義」の仮面を被って主流派へと躍り出るプロセスは、読んでいて背筋が凍るような衝撃を覚えます。

私が本書を通じて最も強く感じたのは、過激主義を「遠い世界の誰かの話」として切り捨てることが、いかに危険かということです。過激な思想は、ある日突然、暴力的な姿で現れるわけではありません。それは、私たちが日常的に抱く小さな不満、将来への不安、そして「誰かに認められたい」という切実な承認欲求に付け込みます。丁寧な言葉遣いや、一見理にかなった論理の中に毒を忍ばせ、少しずつ私たちの倫理観を麻痺させていくのです。

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この本は、読者に深い内省を迫ります。自分は本当に、自分の意思で思考しているのか。それとも、巧妙に設計されたエコーチェンバーの中で、誰かに操作された感情を叫んでいるだけではないのか。社会の分断が深まる中で、私たちが本当に守るべきものは、特定のイデオロギーではなく、異なる意見を持つ他者と対話を続けるための「理性の足場」であるという事実に気づかされます。

今、この世界で何が起きているのかを知ることは、もはや教養ではなく、生き残るための必須条件と言えるでしょう。本書は、混沌とした時代を生き抜くための羅針盤であり、閉塞感に苛まれる現代社会への処方箋です。ページをめくるたびに、読者の価値観は揺さぶられ、読み終えたときには、世界の見え方が一変しているはずです。私たちは今、岐路に立っています。過激主義が主流となる未来を受け入れるのか、それとも、再び理性の光を取り戻すのか。その答えを探すための旅が、ここから始まります。

Posted by 鬼岩正和