ナショナリズムの正体を知る、現代人の必読書。愛国心と排外主義の境界線はどこにあるのか。帰属意識が引き起こす熱狂と惨劇の歴史を解き明かし、分断が進む世界で私たちが失った共感の形を鋭く問う話題の新刊。

なぜ私たちは、一度も会ったことのない誰かと「同じ国民」であるというだけで、激しく心を揺さぶられるのでしょうか。オリンピックの勝利に涙し、時には他国への攻撃的な言葉に同鳴してしまう。その感情の源流にあるのが、本書「ナショナリズムとは何か」が解き明かす正体です。
著者は、ナショナリズムを単なる政治的思想としてではなく、人間の根源的な「帰属欲求」から生まれる切実な感情として描き出します。かつて神や地域共同体が失われた近代において、孤独な個人を救い上げたのは「国家」という大きな物語でした。自分が何者であるかを知りたい。どこかに居場所が欲しい。その純粋な願いが、ナショナリズムという巨大な熱狂を生んだのです。
しかし、本書を読み進めるうちに、背筋が凍るような感覚に陥ります。愛国心という美しい言葉が、いかに容易く「排外主義」へと変貌を遂げるか。そのプロセスが歴史的背景とともに淡々と、かつ情熱的に綴られているからです。
私自身、この本を読んで最も揺さぶられたのは「内側を守るための壁は、必ず外側を排除する刃になる」という事実です。誰かを愛するために、別の誰かを憎む必要があるのか。自国を誇りに思う心が、なぜ他者への想像力を奪ってしまうのか。著者は、現代社会に蔓延する冷笑や分断の根底に、このナショナリズムの歪んだ形が潜んでいることを指摘します。
21世紀、インターネットによって世界はつながったはずでした。しかし実際には、エコーチェンバー現象の中でナショナリズムはより先鋭化し、排他的な感情が加速しています。今こそ、私たちはこの「見えない宗教」の正体を直視しなければなりません。
本書は、単なる知識の提供に留まりません。読者に対して「あなたの中にある帰属意識は、誰を救い、誰を傷つけているのか」という、極めてパーソナルで痛切な問いを投げかけてきます。読み終えた後、ニュースを見る目、そして隣人を見る目が変わるはずです。
感情に流されず、それでいて感情を切り捨てない。ナショナリズムという魔物と対峙するための、冷徹で温かな知性がここにあります。私たちはこの連帯の波に飲み込まれるのか、あるいは新しい共存の形を見いだせるのか。その答えを探すための、一筋の光となる1冊です。






















