未完の中国文化大革命が解き明かす毛沢東の狂気と日本との共鳴。戦後左翼運動の熱狂と現代に続く日中関係の呪縛をデータと新証言で読み解く。歴史の深淵に潜む連鎖を直視し、アジアの未来を問う真実の記録。

あの時代、世界は赤く燃えていました。中国全土を覆った「文化大革命」という狂気は、決して海を隔てた隣国の出来事ではありませんでした。本書が描き出すのは、毛沢東という巨大な存在が放った火花が、当時の日本社会に飛び火し、学生運動や知識人の精神構造を根底から揺さぶった、連動する熱狂の記録です。

凄惨な暴力と破壊に満ちた文革の裏側を、著者は膨大な資料と鋭い洞察で冷静に、かつ情熱的に解剖していきます。なぜ当時の日本の若者たちは、遠い異国の独裁者の言葉に心酔し、自己批判と闘争の渦に身を投じたのか。そこには単なる政治思想の枠を超えた、ある種の宗教的とも言える救済への渇望がありました。日本の戦後史が抱える空白を、文革という鏡を通してみることで、私たちは初めて自らの正体に直面することになります。

読み進めるうちに、背筋が凍るような感覚に襲われるのは、この「未完」という言葉の意味を理解した瞬間です。文化大革命は終わった歴史の一ページではありません。それは現代の中国政治の底流に脈々と受け継がれ、今なお日中関係の歪みとして私たちの前に立ちはだかっています。著者の筆致は、歴史の闇に葬り去られようとしている無数の犠牲者たちの声を拾い上げ、現代に生きる私たちの良心に激しく問いかけてきます。

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私自身、この書に触れて深く震撼したのは、理想を追い求める純粋さが、いかに容易く残酷な破壊へと変質してしまうかという普遍的な恐怖です。しかし、この絶望的な歴史の深淵を直視することこそが、憎しみの連鎖を断ち切る唯一の道であると本書は教えてくれます。

知的好奇心を刺激するだけでなく、魂を激しく揺さぶる一冊です。過去の熱狂をただ批判するのではなく、その熱源が何であったのかを突き止める。その知的誠実さに裏打ちされた物語は、混迷を極める現代の日中情勢を読み解くための、欠くことのできない羅針盤となるはずです。

Posted by 鬼岩正和