年金の根本的な考え方として人口が増え続けることを前提として計算されていた?そのうえで制度発足時の年金収入の大半を無駄な投資に充て運用を失敗した事実。今後どのように制度改革していくのがベストなのか?
日本の年金制度は、戦後の高度経済成長期において、人口が増加し続けることを前提に設計されました。当時は若年層が多く、高齢者が少ない「人口ピラミッド型」の構造であり、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」が機能していました。しかし、現在では少子高齢化が進行し、現役世代の負担が増加しています。このような状況下で、年金制度の持続可能性が問われています。
年金制度の設計と前提
日本の公的年金制度は、現役世代が支払う保険料を財源として、高齢者に年金を給付する「賦課方式」を採用しています。この方式は、人口が増加し、経済が成長し続けることを前提として設計されました。しかし、少子高齢化が進行する現代においては、この前提が崩れつつあります。厚生労働省の資料によれば、将来的な人口推計に基づいて年金制度の見直しが検討されています 。
過去の年金運用と問題点
年金積立金の運用に関しては、過去に大きな損失が発生した事例があります。例えば、2020年初頭には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用損失が約17兆円に達したと報じられました 。また、企業年金の運用においても、AIJ投資顧問による約2000億円の損失事件が発生し、運用の透明性や監督体制の問題が指摘されました 。
今後の制度改革の方向性
年金制度の持続可能性を確保するためには、以下のような改革が検討されています:
- 就労期間の延長と高齢者の就労促進:高齢者が働き続けることを支援する制度の整備が進められています。
- 年金制度の適用拡大:パートタイム労働者や非正規雇用者への年金制度の適用を拡大し、保険料収入の増加を図ります。
- マクロ経済スライドの見直し:物価や賃金の変動に応じて年金給付額を調整する仕組みの見直しが検討されています。
- 私的年金制度の拡充:個人型確定拠出年金(iDeCo)など、私的年金制度の利用促進が図られています。
これらの改革は、年金制度の持続可能性を高めるとともに、国民の老後の生活を支えるために重要です。厚生労働省も、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を目的とした法案を国会に提出しています 。
結論
日本の年金制度は、人口増加と経済成長を前提に設計されましたが、少子高齢化の進行により、その前提が崩れつつあります。過去の運用失敗も制度の信頼性に影響を与えています。今後は、就労期間の延長や制度の適用拡大、マクロ経済スライドの見直し、私的年金制度の拡充など、多角的な改革を進めることが求められます。これにより、持続可能で信頼性の高い年金制度の構築が期待されます。