家族と国家の危うい関係を暴く角川新書。信田さよ子氏が描くサバイバルからレジスタンスへの軌跡。家庭内の支配と社会構造の連鎖を解き明かし、真の自己を取り戻すための視座を提示する、苦境を生き抜くための必読書。

私たちが最も安らげる場所であるはずの「家族」。そして、私たちを守る枠組みであるはずの「国家」。しかし、その二つが密かに手を取り合い、個人の自由や尊厳を静かに侵食しているとしたら。カウンセリングの現場で長年、家族の深淵を見つめ続けてきた信田さよ子氏による本書は、そんな衝撃的な問いを私たちに突きつけます。
本書のページをめくると、まず「家族」という聖域に隠された、息の詰まるような支配の構造が白日の下にさらされます。家族だから愛さなければならない、家族だから自己を犠牲にしなければならない。そんな無言の圧力が、実は国家が国民を管理しやすくするための都合の良い論理と結びついているという指摘は、あまりにも鋭く、読者の胸を抉ります。しかし、その痛みは決して絶望ではありません。それは、自分を縛り付けていた鎖の正体を知ったときに感じる、解放への第一歩なのです。
著者の筆致は、長年の臨床経験に裏打ちされた深い慈愛に満ちています。実際に読み進める中で、家庭内の問題に苦しみ、声を上げられずにきた人々の「サバイバル(生き残り)」の物語が、いかに崇高な戦いであったかが語られます。私たちはただ耐えてきたのではない。生き抜くために、自分を守るために、懸命に戦ってきたのだという肯定感。そのメッセージは、孤独の中にいる読者の心を、凍てついた大地を溶かす春の陽光のように温めてくれます。
さらに本書が素晴らしいのは、単なる現状分析に留まらず、そこから「レジスタンス(抵抗)」へと向かう道筋を示している点です。家族や国家という大きな物語に従順である必要はない。自分自身の感覚を信じ、小さな声を上げ、自分の人生を取り戻していく。そのための具体的な勇気と知恵が、静かな情熱を込めて綴られています。
読後、私たちは自分を取り巻く世界の見え方が一変していることに気づくでしょう。テレビから流れる家族の美談や、国家が説く道徳の背後に潜む「共謀」のからくりが見えたとき、私たちは初めて、真の意味で自立した個人としての一歩を踏み出すことができます。
この本は、家族の問題に悩む当事者だけでなく、この社会で生きづらさを感じているすべての人へ贈られた、知的な「脱出の書」です。重苦しい絆を解き放ち、軽やかな自分として生き直したいと願うとき、本書はあなたの手を取り、どこまでも心強い味方となって伴走してくれるはずです。























