20世紀前半に精神疾患の治療法として導入されたロボトミー手術ですが、なぜ「史上最悪のノーベル賞」とまで言われるようなことになってしまったのか?
ロボトミー手術(前頭葉白質切截術)は、20世紀前半に精神疾患の治療法として導入されましたが、その後の評価は極めて否定的であり、「史上最悪のノーベル賞」とも称されています。以下に、その背景と経緯を詳述します。
🧠 ロボトミー手術とは
ロボトミー手術は、脳の前頭葉と他の部分を切断することで、精神疾患の症状を軽減しようとする外科的手法です。1935年、ポルトガルの神経科医アントニオ・エガス・モニス(António Egas Moniz)が初めてこの手術を実施しました 。彼は、精神疾患が前頭葉の異常な神経回路に起因すると考え、手術によってその回路を遮断することで症状の改善を図りました。
🏆 ノーベル賞受賞の経緯
1949年、モニスは「ある種の精神病に対する前額部大脳神経切断の治療的価値の発見」により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました 。当時、精神疾患に対する有効な治療法が乏しかったため、ロボトミー手術は「奇跡の治療法」として期待され、多くの国で導入されました。
⚠️ 問題点と批判
しかし、ロボトミー手術には深刻な問題がありました。患者の人格変化、感情の喪失、知的能力の低下など、重大な副作用が報告されました 。特に、アメリカの精神科医ウォルター・フリーマン(Walter Freeman)は、アイスピックを用いた簡易的な手法を開発し、多数の患者に手術を施しましたが、その多くが深刻な後遺症に苦しみました 。
📉 廃止とその後
1950年代以降、抗精神病薬の開発が進み、ロボトミー手術の必要性は急速に低下しました。また、手術の倫理性や効果に対する批判が高まり、多くの国で禁止されました。ソビエト連邦では1950年に禁止され、アメリカでも1970年代にはほとんど行われなくなりました 。
🏛️ ノーベル賞の評価と現在
モニスのノーベル賞受賞に対しては、現在でも多くの批判があります。被害者団体からは受賞の取り消しを求める声も上がっていますが、ノーベル財団はこれを受け入れていません 。一方で、モニスはポルトガル唯一のノーベル賞受賞者として、同国では今なお高く評価されています。
🔍 結論
ロボトミー手術は、当時の医学的限界と社会的背景の中で生まれた治療法でしたが、その後の研究と倫理的反省により、重大な過ちであったことが明らかになりました。この歴史は、医療における倫理の重要性と、科学的検証の必要性を強く示しています。